成人病・生活習慣病について
糖尿病や高血圧、脂質異常症、痛風(高尿酸血症)
日本では、食生活の欧米化や生活スタイルの変化により、生活習慣病が増加の一途を辿っています。
生活習慣病は、一つ一つは軽症でも、いくつもの疾患が重なることによって、単独よりも動脈硬化を早く進行させて、一層脳卒中や心筋梗塞などになりやすくなります。
基本的には、どの病気であっても、生活習慣の改善、つまり食事療法と運動療法が中心になります。必要と判断された場合には、薬物療法も併用します。
生活習慣病には高血圧、糖尿病、脂質異常症(高脂血症)、高尿酸血症(痛風)などがあります。体質にもよりますが、運動不足、過食、肥満、喫煙といった生活習慣の是正で改善することも多い上、動脈硬化が原因となるような病気(狭心症、心筋梗塞、脳梗塞、閉塞性性動脈硬化症など)に発展しやすいため、たとえ自覚症状が無くてもはやめに改善するための対策を講じましょう。特にこれらを複数お持ちの方は一つ一つをより厳格にコントロールしないと発症のリスクが非常に高くなります。個々の生活にあわせた継続可能な食事や運動に対するアドバイス、禁煙外来などでのサポートなどを行っていきます。
高血圧
高血圧とは、血圧が正常範囲を超えて高く維持されている状態です。それ自体ではなんの症状も来さないことが多いですが時に頭痛や吐き気、めまい、肩こり、背部痛、胸痛などの症状が出ることもあり、症状がある高血圧は早く治療したほうが良い場合が多いです。また長期にわたり放置すると心臓や脳を含め様々な疾患の原因となり、ぜひとも治療しておきたい病気の一つです。高血圧は日本人にはとても多い病気で、40~74歳の人のうち男性は約6割、女性は約4割が高血圧と言われます。高血圧は放っておくと、その高い圧力によって血管壁にストレスがかかり、動脈硬化が生じて心不全や狭心症、心筋梗塞といった心臓血管系の病気を招いたり、または脳出血、脳梗塞の原因になったりします。 9割以上が本態性高血圧という動脈硬化が原因の一次性の問題ですが、1割には2次性高血圧といってホルモン(原発性アルドステロン症、褐色細胞腫、クッシング症候群、甲状腺機能異常など)や腎血管の異常で2次的に起こることもあります。2次性高血圧の場合、原因となる疾患を治療しないと高血圧は改善しないので、40歳代くらいまでの若い方の高血圧は特に2次性を除外するため血液検査などをしておいたほうが良いでしょう。
診断基準は病院で測った時の基準は140/90、自宅では135/85、24時間血圧計では平均130/80を超えると高血圧と診断されます。1回の測定で決めつけず、病院や自宅以外の場所で測る時だけ高くなる白衣高血圧、自宅で早朝や夜間だけ高くなる仮面高血圧など、1日を通して良い血圧を維持しているかどうかを詳しく知る必要があります。もし血圧が130/85の上か下かいずれかが上回ったら、ご自宅で測定することを是非おすすめします。血圧計はきちんと腕にはまるものであればどんなタイプでも構いませんが、測るときは深呼吸などで落ち着いた状態で1回だけ測ってください。よく、連続的に何回も測定される方がおられますが、連続で測定すると血管の反射によって徐々に下がるのであまり正確ではありません。また家事や帰宅直後など慌ただしい中で測ると必要以上に高く出てしまいますので落ち着いて測ることが大事です。また時間帯は、起床後すぐ、日中、就寝直前、具合の悪い時など色んな状況で測ると、ご自身の血圧の流れや特徴がわかり、非常に治療に役立ちます。
一度薬を始めると一生飲み続けなければならないのが心配、とおっしゃる患者さんもおられますが、長い目で見ると常に血圧の状態が良いほうが絶対的に利益が多いのです。また季節的な変動もあり冬期だけ薬を使用したり、体重が減ることで薬をやめられたり、疼痛や不眠やストレスの解消で血圧が正常化することもあるので薬がやめられるケースもあります。高血圧の薬(降圧剤)は非常に種類が豊富で、ご自身にあった降圧剤を選択し、適切な血圧値にする必要があります。特にご高齢の方は低すぎると脳血流が悪くなり目標値が変わってきますので専門医のもとできちんと管理される事をおすすめします。 そして、適正な体重(BMI25未満)にし、適度な運動(毎日30分以上、ウォーキングやサイクリングなどの軽めの有酸素運動)を継続的に行い、減塩(1日6g未満)に努めて薄味に慣れる、禁煙や節酒(1日にビールなら中ビン1本、日本酒なら1合程度)をする、などの生活習慣の改善(食事・運動療法)を心がけることが肝心です。睡眠・休養をしっかりとって、ストレスを溜め込まないようにすることも忘れないでください。
脂質異常症(高脂血症)
脂質異常症は、血液中の脂質(悪玉コレステロールLDLや中性脂肪TG)が多過ぎる、または善玉コレステロールHDLが少な過ぎる疾患です。以前は、高脂血症と呼ばれていましたが、良性の脂質が低すぎる場合も問題視されるようになり、近年は脂質異常症と称されています。
脂質異常症を放置すると、動脈硬化が進行し、やがては心筋梗塞や脳卒中などを引き起こす原因となります。脂質異常症は、食生活(エネルギー過多)や嗜好品の摂取過多(喫煙・飲酒)、運動不足などの環境的要因が重なって引き起こされると考えられていますが、一部には遺伝子の異常や家族性の発症も見られ、努力だけでは改善しない場合もあります。特にLDLが200前後と高く、血縁者に脂質異常症や狭心症、心筋梗塞などの心臓疾患をお持ちの方がおられたら要注意です。脂質異常症の治療は、コレステロール摂取制限が基本です。漫然と食事制限をするだけでは効果的ではありません。また、適度な運動で代謝を高めることは大事ですが運動だけでも改善しないことが多いのです。そこで薬物療法を組み合わせることで非常にスムースなコレステロール管理が可能となります。
糖尿病
インスリンとは、膵臓から分泌されるホルモンの一種で、血液中の糖分を臓器に取り込ませ、血糖値を下げる働きをしています。通常、血液中のブドウ糖は、このインスリンの作用によって細胞に取り込まれてエネルギー源になったり、脂肪やグリコーゲン(動物デンプン)という物質に変えて肝臓や筋肉に蓄えられます。
しかし、何らかの理由で血液中のブドウ糖が細胞にうまく取り込めなくなり、血液中にブドウ糖がだぶついてしまった状態――それが糖尿病です。血液中に過剰になった糖が尿に排泄され、尿中の糖が高くなることから「糖尿病」と名付けられました。長期にわたり血液中のブドウ糖の過剰な状態が続くと、3大合併症と行って、眼、神経、腎臓に特有の変化をきたしますが、更に問題なのは全身の血管の動脈硬化が非常に強く進行し、心筋梗塞や脳梗塞、人工透析や失明、足切断など、深刻な事態にも陥ります。
最近は健診などで無症状の初期の糖尿病で発見されるケースも多く、耐糖能異常とも言われます。しかし、放置すると喉の渇き、やたら水分を取りたくなる、尿が異常に多い、など特有の症状が出現します。
糖尿病はⅠ型という先天的な異常を含む一部の特殊なタイプを除き、元来の体質に生活習慣が重なって発症します。
血糖値を正常に保ち、また体重や血圧、血中脂質も一緒に良好な状態に保てば、糖尿病による合併症、すなわち糖尿病細小血管合併症(網膜症、腎症、神経障害)や動脈硬化性疾患(冠動脈疾患、脳血管障害、末梢動脈疾患)を起こさずに、あるいは進展を阻止して、健康を維持することは十分に可能です。そして、健康な人と変わらない日常生活の質(QOL)の維持、および健康な人と変わらない寿命の確保もできるようになるのです。
そして、血糖値を正常に保つ上で重要になるのが、継続的な「コントロール」です。医師の指導のもと、まずは食事療法と運動療法を行います。これだけで正常値になる患者様もいらっしゃいます。糖尿病が進行したケースだったり、食事・運動療法だけでは血糖値がうまく下がらなかったりするような場合には、内服薬による治療やインスリン療法*を行うことになります。
*インスリン注射により体の外からインスリンを補って、健常な人の血中インスリンの変動をできるだけ忠実に再現する治療法のことです。
高尿酸血症(痛風)
体の細胞は、毎日の新陳代謝で新しくつくり変えられています。その結果、細胞の核からプリン体という物質が生成されます。このプリン体が、尿酸の元になります。
高尿酸血症とは、血液中の尿酸が多くなり過ぎている状態です。尿酸は水分に溶けにくいため、血液中では尿酸塩として存在しています。尿酸が過多になると、針状の尿酸塩の結晶ができ、体のあちこちに溜まって、痛みを引き起こします。これが痛風です。尿酸はその他、腎尿路系の結石の形成や動脈硬化にも関連があります。
プリン体はレバー類、干し椎茸、魚卵類、えび、かつお、いわしなどに多く含まれています。そしてアルコール飲料には、尿酸値を上昇させる作用があります。こうした飲食物を好む人は、尿酸値が高くなりやすい傾向があります。
高尿酸血症では、当然ながら尿酸値を下げることが大切ですが、その目標値は年齢、性別、持病の有無、痛風発作の既往などで異なります。
食事療法として、前記のようなプリン体を多く含む食品の摂取を控えめにし、バランスの良い食事を摂るようにします。また、禁酒・節酒を心がけるようにします。特にビールはプリン体を多く含むので、注意してください。また、食事療法と併せ、運動で肥満を解消することも大切です。水分摂取量も多めにします。
場合によっては、尿酸が体内で生成されるのを抑制する薬や尿酸の排泄を促す薬などが処方されます。
メタボリックシンドローム
腹囲が男性で85cm以上、女性で90cm以上であることに加え、高血圧、中性脂肪高値、血糖やHbA1cの上昇などがあるとメタボリックシンドロームと診断されます。BMIが25未満で一見それほど肥満でなくても、メタボリックシンドロームと診断される場合があり内蔵周辺に脂肪が蓄積している事を示唆しています。