血管疾患について
すべての血管は心臓につながっており、全身にネットワークを張り巡らし、広がったり縮んだりしながら臓器や筋肉などに調度よい量の血液を常に供給し続けています。動脈硬化で血管が硬くなって内腔に様々な物質が溜まって狭くなると臓器に十分に血液が送れなくなり、その臓器は酸欠になって死んでしまいます。これが重要な臓器になると命に関わることになるので、心臓がうまく働かないと全身のあらゆる臓器に悪影響が出てきます。閉塞性動脈硬化症や頸動脈狭窄症など徐々に詰まる病気もあれば、脳梗塞、心筋梗塞、急性四肢動脈閉塞症など血栓も形成され急に詰まる危険な病気もあります。
一方静脈は動脈に比べ壁が薄くて弱く、後ろから押し出されるような形で血液が前進します。逆流防止のために弁もついていますが、この弁が崩壊すると静脈内に血液が停滞し、静脈血栓症や静脈瘤の原因となり浮腫や皮膚炎、足のつりをきたすこともあります。
問診や診察に加え血液検査、血管エコーやABI測定、心電図、CTやMRIなどで診断します。急性に詰まった場合壊死を防ぐため血栓溶解療法やカテーテル治療が必要なこともあります。
PAD(peripheral artery disease)末梢動脈疾患
心臓以外のすべての血管(大動脈、鎖骨下動脈、頸動脈、腸骨動脈、四肢動脈)に動脈硬化により慢性的に徐々に閉塞をきたし虚血症状(痛み、チアノーゼ、壊死)を来す疾患です。
閉塞性動脈硬化症 ASO
手足(主に下肢)の動脈が、動脈硬化によって狭窄(血管が狭くなる)や閉塞(血管が詰まる)をきたし、末梢部分に循環障害を起こして、酸素や栄養を十分に送り届けることができなくなった病態を閉塞性動脈硬化症と言います。
この病気は、手足の末梢の動脈に生じ、徐々に進行していきます。進行とともに間欠性跛行と言って歩くと痛くなったりだるくなるが休むと治る、冷感、しびれ、足の痛み、色の悪化、潰瘍・壊死といった症状が現れる慢性疾患ですが、血栓(血のかたまり)が形成されることによって急速に悪化するケースもあります。壊死すると感染症などを併発し最悪の場合切断しなければならないこともあります。またこの疾患は狭心症の合併も多く見られますので、心臓の精査が必要です。
■閉塞性動脈硬化症の検査
問診、視診、触診ほか、ABPI*(上腕・足関節血圧比)、超音波検査、造影CT、造影MRI、血管造影などを行います。
また、閉塞性動脈硬化症では、動脈硬化関連の他の疾患を合併していることがありますので、糖尿病や高血圧、脂質異常症(高脂血症)などの検査もおこないます。
■閉塞性動脈硬化症の治療
動脈硬化は主に、高血圧、脂質異常症、糖尿病などの慢性疾患や加齢、喫煙、肥満などが大きく関わるため、全身の定期的な管理とともに、下肢の血流状態、および病態に合わせた適切な治療を行うことが大切です。
閉塞性動脈硬化症の主な治療は、運動療法と薬物療法です。
運動療法の基本は、歩くことです。歩くことにより、足の血行が改善するだけでなく、天然のバイパス(通り道)である側副血行路が発達することも知られています。
閉塞性動脈硬化症の薬物療法では、抗血小板薬と呼ばれる薬剤を中心に、症状に応じて、いくつかの種類を使い分けます。
カテーテルによる血管内治療や外科手術が行われるケースもあります。
下肢深部静脈血栓症
足のむくみは リンパ液の流れが停滞していることが原因の場合が多いのですが、急に腫れたり、片側だけであったり、赤み、痛みなどが伴う場合、足の静脈が詰まって血液が固まって血栓ができる「静脈血栓症」の可能性があります。長期間安静にしていた、外科の手術後お腹に腫瘍がある方、長時間乗り物などで座りっぱなしでいた、肥満がある場合などは特になりやすいです。下肢の血栓が肺動脈に流れていって詰まると、肺動脈塞栓症という非常に危険な病気になることもあります。下肢静脈瘤(血管の凸凹が浮き出ている)も皮膚の浅い静脈のうっ血ですが、静脈血栓症に伴う場合と静脈弁の機能が壊れていることで起こる場合があり、治療法は異なってきます。
超音波検査や血液検査(Dダイマー)、CT検査などで静脈内に血栓があるかどうかや 詰まっている原因を調べて、血栓があれば抗凝固剤で溶かす治療が必要になります。大きな血栓や、ふわふわして不安定なものに対しては下大静脈フィルターという金網状のものを血管内にいれて肺に流れていかないようにする治療をすることもあります。静脈は前述のとおり、壁が薄く周りからの圧迫の影響を受けやすいため、下肢の筋力をつけておくことで予防が可能です。筋肉のポンプ作用により下肢の血液を送り出したまらないようにすることが大切です。弾性ストッキングなどで締めたり、足を上げるなど物理的な療法も効果的です。